カワセミとの出会いで、すっかりご機嫌になった後、小町通りから寿福寺に向かった。
少し離れているし、本堂の拝観は出来ないと言うことで、今まで一度も訪れたことが無かった。

寿福寺は鎌倉五山の第三位に位置し、正治二年(1200年)に北条政子が明庵栄西を招いて創建したお茶に縁の深い寺院だ。栄西は鎌倉時代の初め、日本に茶種を再渡来させ、その種から茶の木が育ち、京都の栂尾に今日の茶園の基礎が築かれた。中国から日本への喫茶の伝来という観点からも、非常に重要な人物だ。
かの喫茶養生記はこのお寺の寺宝で、今は鎌倉国宝館に寄贈されている。現在見られる建物は、宝治三年(1247年)の火災で一回消失した後に、おそらく南北朝時代に復興されたものと言われている。

総門から山門までは、真っ直ぐに伸びた石敷きの参道が続き、ひんやりとした苔の緑に挟まれて、別世界のような静寂があった。
鎌倉のどの寺院とも違う、独特の雰囲気だ。
この独特な空気の中を、栄西も幾度となく歩いたのだろうか。
時代を隔ててもなお、そんな光景が浮かんでくる。

もしお茶が好きなら、是非一度訪れてみて欲しい。
いつもと違う鎌倉を、きっと見つけられるから。